『好み』

仕事が重なって忙しい時、一番手抜きになるのが、ごはん作りです。
いけないな、とは分かりつつも、時間を短縮したいがために、ついつい手を抜いてしまいます。

家族には本当に申し訳ないな、と日頃思っています。
特に父には。

奈良の父は、病気の影響もありますが、高倉健並?に非常に無口です。
ですので、どんな時も何も言わず、食べてくれます。

無言だからこそ、申し訳ないな、と余計に思ったりもします。
父を見ていると、「無言」て解釈がいくらでも広がるから、ある意味すごいなぁと感じます。

そんな父が昨日のお昼、ごはんを2口3口程度しか茶碗に盛っていなかったのです。
ここの所、調子が良い時、悪い時と波があるので、気になり声をかけました。

「お父さん、調子悪いの?」

近頃耳も遠くなっているようで、会話が成立しないことがふえました。
昨日も案の定、かみ合わず、こちらが尋ねる言葉にかぶして「はい〜。」と答えていました。

勘で相づちを打つことが多いので、大事なことはよくよく話をしないとヒアリングができないのです。

繰り返し尋ねると、体調が悪いわけではなく、便通もあるようで、単に食欲がないという話でした。
少し心配もしつつ、夕飯の支度をしました。

ここの所、手抜きの食卓が続いていたので、久々に父の好きな炊きおかずにしました。
テーブルにはお昼に残ったごはんがどんぶりによそい、ラップをかけて置いてありました。

支度ができ父を呼ぶと、そのどんぶりごはんのラップを外し始めたので、「お父さん、ごはん炊けているよ?」と声をかけました。
すると、「これで。」と言うのです。

「えっ?冷や飯が良いの?」
「はい〜。」

とのこと。
まぁ本人が良いなら、と思ったのですが、量が明らかに多そうだったので、「これ全部いけるのん?」と確認すると、「はい〜。」。

お昼ごはんの時と打って変わっての量でしたので、不思議に思いつつ、台所の片付けをしていて、フト浮かんだ言葉。

「好みやな。」

奈良の母が、よーく口にしていた言葉でした。
総入れ歯に近い父は、「野菜は堅い。」と言うので、レンジでチンしたり、炊いたりしていました。

でも、イカピーやおせんべいなど、明らかに堅い物でも、好きな物はムシャムシャ食べるのです。
それを横目で見ながら、母はいつも「好みやな。」と言っていました。

昨日の晩ごはんは父が好きな炊きおかず。
「好みやな。」としみじみ思った夕飯でした。

おかげで、心配が少しやわらぎました。

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